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私の挨拶に少し不服そうな翔也だったけど、諦めてくれたみたいで、相川課長の方に行って話し始めた。
ビクビクしながら茂木さんを見ると、相変わらず機嫌悪そうな顔をしながらこちらを見ている。
…ヤバイな…
昨日の相川課長の忠告が頭の中に浮かんで来る。
「前の派遣の子も潰された」
後で…翔也と話せる機会があったら、気安く声をかけるなと言った方が良さそうだな…。
「翔也さぁん、今日晩ごはんでも行きませんかぁ?」
さっきの般若みたいだった茂木さんが、すっかり猫なで声に戻って、翔也に話しかけている。
「…いや…今日は俺、約束あるから」
素っ気なく言う翔也を見て、どこかでホッとしてる自分が情けない…。
「もぉー、翔也さんは沙也に冷たいんですね、素直じゃないんだからぁ」
茂木さんを適当にあしらった翔也が再び私のそばに来て、そっと耳打ちした。
「今夜…2回目のデートね」
「…!!」
私がビックリしたような表情で見上げると、ニマニマと笑う…あぁ…あの鬼のようなドSの翔也だ…。
「じゃ、相川さんあとお願いします」
言いたいことだけ言って翔也は経理課から出て行った…。
…非常に気まずい空気が流れ続けている経理課の中…。
私は気を取り直して、カタカタとキーボードを叩き始めた。
夕方5時になると、相川課長が私の所に来て言った。
「神崎さん、私今日は専務と接待なんで残れないんだけど…
開発部は仕事してるから、終わったら適当に戸締りだけして帰ってくれる?」
「はい、解りました」
まだ1/3くらい残っている計算書をひたすら打ち込みながら私は頷いた。
相川課長が出て行くと
「斉藤くぅん、一緒に帰ろう」
茂木さんが斉藤くんと一緒に経理課から、お疲れ様も言わずに出て行く。
「神崎さん、副社長…マズイよ…気をつけて」
コソコソっと栗原さんは耳打ちして、鞄を持って帰って行った。
…静かになった経理課で私は深くため息をついた。
翔也のおかげで、今日は散々だ…。
今夜デートとか言ってたけど、仕事が終わるまでまだ、1時間半はかかる。
…翔也が来たら断ろう。
私は再び仕事に集中した。
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