天使と悪魔

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「…お前ら…処分は追って連絡するから… サッサと帰れ!」 翔也に言われ、茂木さんと斉藤くんは、経理課からポツリポツリと出て行った…。 「…茜…大丈夫か?」 ガムテープを外してから、まだ恐怖で震える私の体をぎゅっと翔也が抱きしめた。 「…箱…パンドラの…」 「…何…?」 震える唇から、翔也に言葉を投げつけた。 「翔也は…私にとって… パンドラの箱だから… 触れちゃいけないんだよ…」 「え…?何言ってるの?」 「…私が…翔也に触れようとすると…必ず災厄が…起きるから…」 翔也が悲しそうな目で私を見つめた…。 「茜…そう思ってあの夏も俺の前から消えたんだろ…?」 「…………」 私は涙でいっぱいの目を翔也に向ける…。 それをじっと見つめていた翔也が口を開いた。 「俺は…あの頃からずっと茜が好きだったよ… この2年間だって… お前を忘れたことはなかった… 何度もお前の部屋の前まで行ったんだよ。 でも…蓮がいるかもしれないって思って… 結局いつも会えなかった… もう、俺の前から消えないで…」 きつく私を抱きしめる翔也の腕が、小さく震えてる。 「…私…もう32歳のおばさんだよ…」 「…知ってる」 「13歳も歳、離れてるんだよ…」 「…知ってる」 「8年も不倫してた女だよ…」 「知ってるよ全部」 私は翔也の背中にそっと手を回した…。
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