パンドラの箱

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翔也は私の外されてしまったボタンをひとつずつ閉じて、自分のスーツを私に着せてくれた。 「…茜、送ってくから今日はもう帰ろう」 「…………」 私は無言のまま翔也に肩を抱きかかえられて、会社の地下の駐車場に止めてあった翔也の車に乗せられた。 車に乗ってから翔也はケータイを取り出して、どこかに電話をかける。 「あ、相川さん、 ちょっと…理由はあとで話すけど、神崎茜は明日休ませます。 はい…そうですね…はい… よろしく頼みます」 電話を切って私を見つめた翔也は、柔らかく微笑んで私の頭をクシャクシャっと撫でた。 …あ… これ…蓮もよくしてくれた… 「茜は何も心配しなくていいよ。もう大丈夫だから」 覚えのあるその言葉に私は再び気持ちが引き返す…。 「…翔…ゆ…悠木くん…」 「…翔也ってさっきは呼んでくれたじゃん」 「あの…やっぱり私みたいなおばさんと…その…」 もごもごと言い出した私の唇を、翔也はそのまま自分の唇で塞いだ…。 …あ… キス…しちゃってるし… 唇をスッと離した翔也が、ゆっくりと話し出した。 「茜…パンドラの箱の話って続きがあるの知ってる?」 「え…?」 「箱を開けた時は、災厄が飛び出したけどさ、 箱の中にはまだもうひとつだけ残ってたものがあったんだよ」 「……何が残ってたの…?」 翔也はクスっと笑って、私をまた抱き寄せた。 「プロメテウスがこっそり箱に忍び込ませておいたのはね、 …希望だよ…」 そう言って再び落とされた翔也のキスを、私は素直に受け止めた…。   
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