出会い

5/8
前へ
/65ページ
次へ
開店準備で、レジ周りの商品を手直ししながら緊張気味の翔也が可愛くて、一応話しかけてみたりする。 「悠木くんはどこの高校なの?」 「あ…開南高校です」 「あら…結構頭いいんじゃない」 「…いえ…そうでもないですよ」 「バイトするの初めて?」 「はい。親に社会勉強しろって言われて」 「ふふふ…そうなんだ、学生さんも大変ね」 どうでもいい世間話だけど、少しでも打ち解けないと、教育係の任務が果たせないと思い私は慣れない会話を頑張った。 それにしても、初めてのバイトにしては手際がいい。 ゴツゴツとした男らしい手が商品を綺麗に並べ直して行く。 ポロシャツからチラリと見える胸元がやけに艶っぽくて、ついつい見とれる。 「…神崎さん…そんなに俺の胸元、気になりますか?」 急にぶつけられた翔也の言葉に、私は激しく動揺した。 クスっといたずらっぽく笑う翔也の瞳に、そのまま吸い込まれそうになって私はハッとした。 「…そうね…お客様の前ではもうひとつボタン閉めた方がいいかもね」 冷めた視線を強引に翔也に送ると、彼はニコっと笑ってボタンをひとつ閉じた。
/65ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1876人が本棚に入れています
本棚に追加