夜布庵那は飽き飽きしていた。

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戸棚から出て来たのは、小麦粉と砂糖と塩と醤油と味噌。 結局それっぽいという理由で庵那は小麦粉を選択し、散らかった床を気にする素振りさえなく次は冷蔵庫のドアを勢いよく開けた。 真っ先に目についたのは容器に入った赤いアレ。そう、トマトケチャップだ。 「これと……あとは卵でいいか」 ラス一となっていた卵が召喚用魔法陣の材料という、残念さ満点の用途。 だが庵那にとっては、その残念さ加減が最高だった。下らなければ下らない程に、庵那の気分は高揚していった。 卵とケチャップと小麦粉を抱えた17歳は、人生で一番満足げな表情で寝室へ向かった。 庵那の寝室には漫画やゲームやアニメのDVD等が大量に完備されているが、その全てがきっちり片付けられており、今時の男子の部屋とは思えぬ程片付いていた。 尤も、寝室にある彼のコレクションはほんの一部で、大部分は隣の物置と化した部屋にこれまたやはりきっちり収納されている。
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