夜布庵那は飽き飽きしていた。

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そしてそんな整理整頓のされた小綺麗な部屋に向けて、庵那は小麦粉をぶちまけた。 「だらっしゃぁぁぁぁい!」 腹の底から声を出したのは、おそらく産声以来だろう。 叫び声を上げながら小麦粉の中身を散らし、部屋はどんどん白に染まっていく。 「うッ……げほッ、げほッ!がはッ、は、肺に……!」 こうなることを庵那は事前に予想していなかった。いつもの冷静な彼であれば、ぶちまけた小麦粉でむせることなど容易く想像出来ていただろうに。 暫く庵那はむせ続けた。そして庵那の視界は小麦粉が霧のように覆っていた。 庵那の咳が止まる頃には、霧状になって部屋に充満していた小麦粉も晴れて、壁も床も天井も小麦粉まみれ。 白く染まった自室を見て、庵那は笑いを堪え切ることが出来なかった。 「あはっ、あはははははっ!」 まさに抱腹絶倒とはこのこと。 やはり庵那は、人生で最も爆笑していた。 全ては一人暮らしだからこそ為せる事である。
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