夜布庵那は飽き飽きしていた。

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……庵那は恐る恐る目を開ける。 そうしてそこに見えたものは、先程の小麦粉のような白い何か。 だが明らかにそれとは違う……そう、みずみずしいというか、先程のものよりもっと霧に近い……そして、温かななにか。 「何だコレ……湯気?」 まさしくそれは湯気だった。何故こんな部屋に湯気が立っているのか? そんなことはわからないが、それより庵那が気になったのは、その湯気に隠れながらもうっすらと見える肌色。 「誰だ……?誰か居るのか……?」 気配もはっきりと感じる。誰か居るのに間違いないはずだ。 だが向こうは庵那の存在に気付いていない。どうやら庵那に背を向けていて、いやにリラックスした状態のようだ。 庵那は期待に胸を膨らませながらも、不安な気持ちも少なからずあった。 だがすぐに不安など吹き飛ばし、意を決して湯気の中の人物に声を掛けた。 「あ、あの……どちらさまで?」 庵那は言い終えた直後自分の失態に気が付いた。 僕が召喚しておいてこの言い草はねぇだろオイ、と。
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