夜布庵那は飽き飽きしていた。

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現時点で、庵那はこの鮮やかな緋色の瞳と髪を持つ美少女を落ち着かせる術など持ち合わせてはいない。 更に最悪なことは、庵那はテンパり過ぎるあまりに、美少女の体から目を背ける、という単純なことすらも実行するのを忘れていたということだ。 「きゃああああ!み、見ないでぇっ!」 「うぇ、あああごめんっ!」 謝った時にはもう遅い。 刹那、彼女の全身が発火した。 そしてその炎は、一直線に庵那へと襲い掛かった。 「ぎゃああああああ!熱ッ、熱ゥゥゥゥッ!」 スタントマン顔負けの火だるま状態で、庵那は床を転げ回る。 激しい動きが幸いしたのか、すぐに鎮火に成功し大事には至らずに済んだようだ。 そんな庵那を尻目に、衣類の一切を身につけていない緋色の髪を持つ美少女は逃走を試みていた。 ……だが、魔法陣の中央に設置されていた卵を踏み付け、飛び出してきた中身により足を滑らせた。 美少女は庵那に重なるように転倒し、そして…… 「「……っ!?」」 口と口が、触れ合った。
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