夜布庵那は飽き飽きしていた。

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朝起きて、昼には学校に行き、夜が来たら寝る。 日によって多少の差異はあれど、彼にとって今までの人生は全てがそれだけだった。 今日も彼……夜布庵那(ヨルフアンナ)はうざったい陽射しを浴びながら通学路を歩く。 庵那には一緒に登下校をするような可愛い幼馴染みも居なければ、無邪気に自分を慕ってくれる義妹も居ない。 故に庵那は「可愛い女の子降って来ねーかなー」と思いつつ慣れた道を慣れた足付きで学校へ向かうのだ。 案の定、女の子どころか烏の糞すら落ちて来ることなく安全に学校まで辿り着いた庵那には、同性の友達すら居ない。 決していじめられている訳でもなく、決して人付き合いが悪い訳でもなく、決して失敗ばかりしている訳でもない。 だから庵那の周囲からの印象は、良くもないが悪くもない。 というよりも、これといった個性が見当たらないと言うべきか。 とにかく庵那は人との関わりが極端に少ない生活を送っていた。常に自分を偽り続けながら。
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