夜布庵那は飽き飽きしていた。

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そんな庵那だからこそ、代わり映えの無い日常に飽き飽きしていた。 ラブコメもスポ根もミステリーも彼には無縁。生き甲斐と呼べるものが彼には皆無だった。 だから庵那は漫画を愛読し、ゲームを手放さず、アニメを好んで視聴した。 全ては自分に無い生き甲斐を求めて。 ……だが庵那は、そんなことが無意味だととうの昔に知っていた。 漫画もゲームもアニメも、自分が夢のような体験をしている感覚に陥るから大好きだ。 それらは夢を与えてくれる。 ……けれど、そんなものに意味はなかった。 夢は覚めるから夢なのだ。庵那が本当に体験したかったものは、超常的事象が多発する夢幻などではなく、魅力的な友人達と毎日を楽しく過ごす……本当の意味での平凡な日常なのだ。 庵那は頬杖をつき、適当に授業を受けながら考える。 周りに自分が魅力的だと感じる人間はいない……だからこそ、人と関わることもない。 こんな作業ゲームのような現実、何が面白い? ……そうだ、ならいっそデータを消せばいい。 そのあとのことなんざ知ったことではないが、生まれ変われるとしたならばこんな下らない人生はもう二度と歩むまい。 彼、夜布庵那は自殺を決意した。
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