夜布庵那は飽き飽きしていた。

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決意した……と言っても、今まで庵那がその結論に達していなかった訳ではない。 むしろこの自問自答すら庵那の日常生活の一部に組み込まれているほどで、同じ結論に達する度に彼は余計に死にたくなるのである。 だが問題はここからだ。 授業などそっちのけでノートにあらゆる自殺方法を書き写す。 絞殺、斬殺、刺殺、毒殺、圧殺、殴殺、撲殺、轢殺…… 考えうる限りの自分を殺す方法を、ノートにびっしり書きなぐる。 ……しかし、その文字の羅列を眺めて彼はいつも思うのだ。 ……普通過ぎる。 こんな普通の死に方でいいのか?今までの人生だって目立ったことは何一つないというのに、死に方すら普通でいいのか? どうせ死ぬなら、自分という存在を知らしめるような死に方がいい。 だからもっと普通じゃない、異常な方法はないか……そんなことを一日の残りを使って考えている内に、いつの間にやら一日が終わっている。 また今日も繰り返した。 また今日も死ねなかった。
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