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彼女のお墓には花束が供えてあった。俺は花に詳しいわけではないから、その花がなんなのかは分からない。彼女なら分かったのかもしれない。彼女の家は確か花屋で、彼女自信も花が大好きだった。
「綺麗な花だ。よかったな……」
独り墓石に話しかける。返事など期待はしない。返ってくるわけがないのは分かっているから。期待はしない。でも聞きたいとは思っている。彼女の声がもう一度だけ聞きたい。
そんな時――
『待ってるからね……私はずっと、待ってるから……』
空耳にしてはハッキリ聞こえすぎだ。だが確かに彼女の声だった。俺は辺りを見渡して彼女の姿を探した。気づけば走り出していた。ただ、彼女を見つけるために。
そこで俺は気がついた。人が生まれた意味を――
俺は勘違いをしていたのだ。なぜこんな簡単なことが分からなかったのだろうか。俺は立ち止まって、青々とした空を見上げる。
「絶対に見つけてやるから――」
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