プロローグ

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?side この頃、夢を見る。 いつも同じ。 質素な部屋に、横たわる一人の男の夢。時々、咳をする彼。その咳が、余りに辛そうで声をかけようとするが、私は驚きのあまり固まってしまった。 何故ならば、咳を抑える為ふさいだ手から、血が見えたから。 きっと、この病は…………      老 咳 だ。 そして、一番驚いたのは男の顔だった。私にそっくりだったから。 だから、なのかその男が私に見えた。老咳になった私の姿。 多分、男は治らない時代にいる。 私もこの人と同じあの人を守る為に存在する。それなのに、不治の病で倒れ、隊を離れるなんて……。      悔しすぎる。 私の住む時代は、老咳は治る病。 だから、私の世界にくれば貴方は…………    治 る の に 。 近くに見えるもう一人の自分に手を差しのばしたいが、届かない。 もし、手が届くなら……… 老咳が治るこの時代に彼を。 今、思えばこれは序章に過ぎなかった。そう。 誰も予想しない出来事を引き起こす為の。
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