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『えぇー。めんどくさいです。どうせ、私が稽古をすると皆、倒れるんですから、つまらないですし。「お前が手加減しないからだろうが!!!」あーあ強い方と手合わせしたいです♪
それに………………』
いつものように、陽気に話す沖田だったが、顔に陰りを見せた。
「それになんだ?」
長年、一緒にいるが、こんな総司を見るのは初めてだ。
なんだが遠くに行きそうな……
『何だか、嫌な予感するんですよね。
気のせいであってほしいですが………。この気持ちのままじゃ剣を触れませんから。』
歳三side
確かに総司のいう通りだ。
刀を持つ者にとって刀の乱れは、心の乱れ。命に関わるかもしれない。
「今日の稽古と巡察はいいから、家で大人しくしてろ。
いいか……
絶対一人で外に出るな!!!」
『子供じゃないんですから……。
いくら私でも分かりますよ。では、これで・・・』
沖田は、立ち上がり戸に手をかけようと伸ばした。すると、
「総司、気をつけろよ」
土方の真剣な物言いに一瞬、驚きを見せたが、すぐさまにっこりと笑って
『はい。では、また』
そう言って沖田は、土方の部屋を後にした。
部屋から遠ざかる気配を感じながら、キセルに火をつけた。
『フゥー』
と吹くと白い煙が部屋に舞う。
襖を開け、新鮮な空気を入れるが土方の心は外の綺麗な青空ではなく曇天のように曇っていた。
総司…………
あいつの嫌な予感は当たる。
何事もなければいいんだが………
ふと先程の顔が浮かび、不安を募らせた。
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