閉ざした心

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side.H 「お帰りなさい、太輔様。」 俺はこの人に拾われた。 前の主人にいらないと捨てられた。 あの日も大雨だった。 もう捨てられたくない、 だからこの人には逆らわないって決めたんだ。 「ただいま、ひろ。 今日も雨だね。」 この人は帰ってくると必ずと言っていいほど、 俺の頭を撫でて、やさしく微笑みかけてくれる。 なんで、こんなにやさしくしてくれるのか いつか心を開いてしまいそうで怖いんだ。 「家の中ばっかりで 飽きてこない? たまには外出てみなくていいの?」 「大丈夫です。 慣れますから。」 「外、行きたくなったらいつでも言ってね?」 そう言ってスーツの上を脱ぎ捨てて どっかに行ってしまった。
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