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「……っ…」
思わず手で口を押さえる。
……しまった。
つい、“昔”のこと言っちゃった…。
「……」
チラリと横目で氷露を見る。
氷露はどこか遠い瞳をしながら、寂しそうに微笑んでいた。
「……では、和食でよろしいですか?」
「う、ん……」
「わかりました。少しお待ちくださいませ」
――…
―――……
明日の用意をしてもらって、制服も綺麗にしてもらって。
することのない俺はただぼんやりと窓の外を眺めていた。
すると襲ってくるのは眠気で……。
なんとか我慢したものの、やっぱり睡魔に耐えることなどできず、俺は眠りの世界へと誘われていった――…。
……夢の中で、幼い頃の氷露と会ったのだろうか。
優しい優しい笑顔で、俺の額にキスをしてくれたように感じた。
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