坂の傾き

4/6
6人が本棚に入れています
本棚に追加
/13ページ
帰りのホームルームが終わって、天野から図書館行こうと誘われるのをいつものように断ってから早々と教室を出た。受験生ってことて連絡事項が多いのと、担任がよくしゃべる人ってことでうちのクラスのホームルームは他よりも少し、いや、だいぶ長い。 だから僕らが帰る頃には部活も始まってるし生徒会の会議だって始まってる。まぁどっちも僕には関係ないことだけど。 正門を出ようとした時に門の影から急に誰かが飛び出してきたかと思ったら、あいつだった。杏との会話を思い出して、心臓がどくんと鳴った。落ち着け、焦っちゃだめだ。 「バカしらとりっ!」 そいつが振り返って小さく叫んだ先には、ボランティア部でよく見かける女の子が手をふって逃げていっていた。 「あ、えっと、こんにちはっ。その、さっきのは気にしないでくださいっ。」 ただ、そいつのほうがよほど焦っていた。 「…だいじょぶ?」 そいつは真っ赤になったまんま頷くとそのまま下を向いてしまった。 なにを話していいかわからずに黙っていると、そいつは静かに顔を上げた。 「一緒に、帰ってもいいですか?」
/13ページ

最初のコメントを投稿しよう!