5人が本棚に入れています
本棚に追加
***
しばらくしてトロッコの終着点についた。
あたしの目的の場所。
「あ、露子ちゃん。
待ってたんだよ。
遅いから心配したよ」
頭にバンダナを巻き顔をマスクで被った男が近寄ってきた。
あたしはこの人を『おじさま』と呼んでいる。
全く素性はわからない。
この仕事はそういう依頼者が多いからあまり気にしない。
所謂、『訳あり』ってヤツ。
「ごめんなさい。
ちょっとトラブって……」
あたしはペコペコと謝まる。
「火薬は?」
おじさまはトロッコの中を覗き込みあたしに尋ねる。
「ここにあるじゃないですか」
ぐいっとあたしはトロッコを指差す。
「これは違うよ、露子ちゃん」
おじさまは首を傾げ腕組みをした。
「え?」
何言ってるのよ、全く……。
「……ヒッ!」
これは!
あたしは驚き腰を抜かし失禁した。
『何で助けてくれなかったの?
露子ちゃん……』
トロッコの中にはぐしゃぐしゃになった聡子が入っていた。
あたしが殺した聡子。
あたしは……。
初めて『運び屋』の依頼を失敗した。
そんなあたしを聡子はあざ笑ってる……。
聡子もあたしが憎かったのだとこの時わかった。
最初のコメントを投稿しよう!