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「………全てが無になれば誰も苦しまなくてすむ」
あたしの頭に過ぎった。
聡子はあたしの親友だった。
仮にも親友だったのだから共倒れの方がまだましよね。
「な、何言ってるの?
露子ちゃん。
助けてほしいの。
あの時はあたしも悪かったわ。
でもね、今は彼と別れたの。
だからもう忘れて。
ね?」
必死に聡子は言う。
あたしが愛したあの人を奪って、その挙句別れたですって?
コイツはあたしの心をずたぼろにした。
「……わかれたの?」
あたしは改めて尋ねる。
「そうよ」
聡子の答えは変わらなかった。
「……死ね……」
あたしはポイントを右に倒した。
ゴトン……
ゴトン……
トロッコがゆっくり動き出す。
「ヒッ!」
恐怖のあまり聡子は目を見開く。
「…………」
無言であたしは聡子を見つめる。
ゴトン……
ゴトン……
聡子の元にじわりじわりとトロッコが近づく。
ぐしゃり……
「ぎゃあああっ!」
生々しい音と同時に聡子は悲鳴をあげた。
トロッコが聡子をひいた瞬間妙な感触が体に伝わった。
そして血飛沫があたしの体に降り注ぐ。
「あたしは今日から『殺し屋露子』ね
ふふふ……」
血をふきながらあたしはぐしゃぐしゃになった聡子を見下ろした。
そして何事もなかったかのようにトロッコを動かしはじめた。
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