ケイトの友

5/12

8733人が本棚に入れています
本棚に追加
/107ページ
困った顔を浮かべるリザイア。男の方はムスッと不機嫌そうな顔をしている。 「それがだな、ミラ様が逃げ出したんだ。」 「はい?逃げた?」 「そう、逃げた。詳しいことは面倒だから省くとして、ミラ様は嫌な事から逃げている。」 「本当に省きましたね。」 「おい、リザイア!」 リザイアが本題に入らないことに腹を立てていたのか、いらいらした様子の男が強い口調でリザイアに声を掛ける。 「ああ、はい。すみません。ケイト君、ミラ様は見ていないか?」 一度男に謝った後、ケイトに本題を伝える。もしかすると、まだ森の中に潜んでいる可能性もある。しかし、寂しがり屋のミラ王女がいつまでも一人でいるはずがないと、この集落に聞きこみに来たのだ。ほぼ正解である。 「んー、俺は鍛冶場に籠ってましたからね。戸はお客さんが来るから開けたままにしてたんで、もしかしたら家の中にいるかもしれません。」 ミラの額から一滴の冷や汗が流れた。このまま同じ場所にいれば見つかってしまうかもしれない。しかし、今動けば間違いなく見つかる。 「時間も時間なんで、飯でもつくりながら家の中探してみますよ。」 首に手を当てながらだるそうに言うケイト。 「そういえば私も腹が減ったな。」 「俺につくれってことですか?職務放棄になりますよ?」 態とらしく腹を押さえながらケイトに告げるリザイア。男は眉間に皺を寄せ、ケイトは笑っている。 「問題ない。うちの隊は皆優秀だからな。それに私はこの家の中を、家主の君と一緒に捜索するのだ。職務放棄はしていない。」 ドヤ顔でケイトに言うリザイア。男は噴火寸前である。
/107ページ

最初のコメントを投稿しよう!

8733人が本棚に入れています
本棚に追加