ケイトの友

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ぶつぶつと文句を言うリザイアの後ろを俯きながらついていくミラ。これから説教が続くのは明確だ。 「…あ。」 美味しそうなにおいが鼻を擽り、ミラは顔を上げる。それと同時に小さく腹が鳴った。台所に立つ友の背中は大きかった。 「ミラもリザイアさんも、俺ん家では地位なんて関係ないからな。」 前回リザイアがただ飯を食らっているのは言うまでもない。今回との違いは、前回の彼女は客であったということだ。 「ケイトさん、私は何をすれば?」 「味見。」 鍋を指差しながら言うケイト。湯気の立つうどんのつゆ。ケイトはその横でうどんを茹でている。ミラは困った。どうやって味を見たらいいのかわからない。そもそも味見などしたことが無いのだ。 「ケイト君、これ使うぞ。ミラ様。」 見かねたリザイアが適当に小皿を取り、つゆをお玉で掬って渡す。受け取ってから辺りを見回すミラ。まだ何かを探しているらしい。 「匙なんて使わなくていいよ。今は俺らしかいないし。お上品である必要ないから。」 ケイトは今、小麦粉と水を混ぜている。ミラは少し迷った後、小皿に直接口をつけて味を見る。 「あ、美味しい。」 「しょっぱくないか?」 「いえ、それほど。出汁の味がして美味しいです。」 「そうか。」 うどんを茹でる鍋の横に底の深くない鍋を用意して火にかけ始める。その鍋の中は油だ。 「何をするんですか?」 「揚げ物。」 テキパキと食事の準備を進めていくケイト。肉を捌いて先程の小麦と水を混ぜた物に放り込む。
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