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器に茹であがったうどんをブチ込み、つゆを注ぐ。湯気が立ち、ミラの腹がもう一度鳴る。
「ミラ、先座って食ってな。」
器とフォークをテーブルに置き、椅子を引く。言われた通りに腰掛けるミラ。
「ん?私のは?」
「…。」
「あ、おいし。」
揚げ物をして返事をしないケイト。ミラはうどんを少し食べ、つゆを飲む。リザイアはケイトの肩をつついている。
「リザイアさん何もしていないでしょう。」
「ほ、ほら、ミラ様に小皿渡したし。今仕事中だし。」
「知ってますよ。器出すの忘れちゃったんです。」
そう言って棚から器を取りだした。満足そうに鼻を鳴らすリザイア。こちらも同じように盛り、テーブルに置く。そこでリザイアの顔が蒼くなった。
「ケ、ケイト君。私にミラ様と同じ食卓を囲めと言うのかい?」
当のミラはよほど腹が減っていたのか、夢中でうどんを貪っている。
「先程、俺の家では地位なんて関係ないって言いましたよね。」
「いや、しかし…。」
渋るリザイア。当然だろう。王族と同じ食卓を囲むことなどありえないことだ。よほど位の高い貴族でないと実現しないだろう。
「いいんですって。なぁミラ。」
「ふ?ふんふん。」
なんの話かわからないが、とりあえず頷くミラ。口にはうどんを詰め込んでいるので返事ができない。ほら、と言いながら椅子を引くケイト。ミラが何の話か理解し、もう一度頷いた。揚げ物に火が通ったようで、油から引き上げるケイト。
「ほら揚がったぞ。熱いからな。」
揚がったかしわ天をうどんに乗せていく。ミラは目を輝かせた。
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