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「俺達が会った時の結婚式のやつだろ。」
「はい。そうです。」
そう言ってミラは膝の上に乗せていた包み、宝剣を抱えた。煌びやかな装飾は未だ健在である。リザイアは宝剣を見てやっぱりと渋い顔をしている。
「ちょっといいか?」
「はい。」
ケイトがミラから宝剣を取り上げる。リザイアは慌てる素振りを見せたが、ミラはケイトを信頼し、宝剣を手渡した。ケイトはなんの躊躇いも無く宝剣を抜き放つ。
「手入れはしっかりとされ…。」
「…ケイト君?」
刀身を眺めたケイトが言葉を切ったため、リザイアが話しかける。ケイトは眉間に皺を寄せて、角度を変えてから刀身をじっと見つめている。ミラは明後日の方を見て冷や汗を流す。小さく息を吐いてから正面を向いた。
「…リザイアさん。この剣をどこかにぶつけたとかって報告受けてますか?」
ケイトの言葉にミラの肩が小さく震えた。その様子に見て見ぬふりをし、ケイトは目でリザイアの発言を促す。
「それはありえない。婚姻のための大切な宝剣だ。」
「なのにミラが持ってるんですね。」
また渋い顔をしているリザイア。ケイトは宝剣の刃に目を落とし、鎬を指先でつつきながら口を開いた。
「欠けてますよ。」
ガタンと椅子を蹴って立ち上がるほど強い衝撃を与える発言。立ち上がったリザイアは目を見開いて机に両手を勢いよく付いた。器に残る汁が波紋を広げる。
「…これは隊長と相談せねばならないな。」
ドカッと椅子に座りこみ頭を抱える。その横でミラは顔を蒼くして俯いている。
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