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ケイトが弟子入りして、幾つも歳月が流れた。
「師匠、話とはなんでしょう?」
二人の師に呼び出されたケイト。弟子入りした頃と比べて随分と背が伸びて、体が引き締まっている。
「まぁ、立ち話も難だ。座れ。」
老人、名をカグル。カグル・マクスウェルといった。齢は七十を過ぎている。医療が発達していないこの世界では七十は高齢である。
カグルが立っているケイトに座るよう促す。現在、この場にカグルの妻、アン・マクスウェルはいない。買い物だ。
「はい、失礼します。それで話とは何でしょうか?」
早速本題に入ろうとするケイト。
「うむ、幼いお前がうちに来てから五年だ。俺もアンも、お前が途中で修業を投げだすと思っていた。だが、お前は俺達が何も言わなくても文句を言わず、自分で仕事を見て試行錯誤をしていた。
お前は筋がいい。これから本修業に入ろうと思う。着いてこれるか?」
思わぬ師からの言葉。
「はいッ!!もちろんです!!」
腹から声を出すケイト。彼の中に今までの五年間についての疑問は無いようだ。
「おや、何を喜んでいるんだい?」
戸を開き、帰ってきたアンがケイトに問う。
「し、師匠が本格的に修業を始めるって!!」
喜んでいるケイト。魂の年齢は二十五歳のはずだが、本人は新しい人生で気分を心機一転しているようだ。
「おぉ、そうかい。じゃあ、あたしも本格的に教えようかね。」
「本当ですか!?」
アンもケイトに修業をつける気になったようだ。
「今日はもう遅い。修業は明日からだ。」
カグルが言う。
「はい!!」
嬉々としながら寝床に着くケイト。こうして夜は更ける。
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