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再び男と顔を合わせたのは約束の通りの日付。
「よぉ、来たな。」
鋭い眼光を放ちながら男に話しかけるカグル。
「…爺さん。あんた、すげぇよ。」
「だろ?」
悪戯が成功したような楽しそうな表情を浮かべているカグルに対し、ケイトは明らかに混乱している。
「ほら、約束の品だ。受け取りな。」
ケイトのことなど気にも留めずに男とやり取りをするカグル。
「あれ?…しっくりくる。」
次も男が驚く番だった。
「当たり前だ。俺が作ったんだからな。」
誇らしげなカグル。研いだのはアンである。
「さて、お前さんはその槍にいくら出す?」
「「…は?」」
ケイトと男の声が重なった。ケイトと男はカグルが何を言っているのか理解できていない。ケイトが見てきた師は、主に武器の修理をしていた。一から作っているのを見たのは両手両足の指を足して漸く足りる程度だ。
それでもマクスウェル夫妻はケイトを養えるほど稼いでいる。
「…よし、これでどうだ!!」
おそらく、とんでもない金額を要求されると思っていたであろう男は、財布から金を引き摺り出すとカグルに渡した。硬貨の色を見る限り、なかなかの金額になるだろう。真面目に暮らせば一月は優に暮らせるだろう。
「よし、これがお前の気持ちだな。しっかり受け取ったぜ。」
金額を確認する様子もなく、カグルは硬貨を乱暴にポケットにしまった。
「爺さん、男として惚れたぜ。」
「やめろ、気色悪い。」
尊敬の眼差しを向ける男に毒を吐いて腰をあげる。
「用が無いなら帰れ。俺はまだ仕事があるんだ。」
「ああ、またなんかあったら頼むぜ!」
そう言った男は笑顔だった。
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