修行

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「すごい人ですね。」 「流通の要だからな、この町は。あの商店街の連中も、ほとんど行商人だと思うぜ。」 「ほぇ~。」 気の抜けた声を出すケイト。初めて見るのだろう。 「大通りには用事ねぇからな。」 「…はい。」 もしかしたら寄れるかも、という彼の甘い考えを一蹴するカグル。彼らは仕事のために来ているのだ。観光に来たわけではない。 「その商人の店はどこにあるんですか?」 未だ荷車から降りるつもりのない師に尋ねるケイト。 「もうちょっと進んだところだ。このまま道なりでいいぞ。近づいたら教える。」 「わかりました。」 また黙々と突き進む。 「ここを右だ。」 「はい。」 それからしばらくして、黙っていたカグルがケイトに指示を出す。すぐに反応し、進行方向を切り替える。 次はそれほど長い距離を歩かず、カグルに止まるよう言われる。 「邪魔するぞ。」 「あ、ちょっと待って下さい!」 「盗まれないようにここで待ってろ。」 「あ、はい。」 ケイトが荷車をどうしようか悩んでいるのに、さっさと店へと入ろうとするカグル。後を追おうとするケイトに荷車を見ているように言う。 「…。」 師が商人の店に入ってしまったため、暇になるケイト。荷車の上に座り、口笛を吹く。地球にいた頃の曲だ。 「…うぇっ!?」 気付いた時には荷車の周りに数人の幼い子供達。口笛を吹いて上の空だったケイトは気付かなかったらしい。 「ねぇねぇ、なんて曲なの?」 「ねぇ、なんて曲?なんて曲?」 ケイトを見上げながら目を輝けせる子供達。聞いたことのない陽気な曲だったのが原因だろう。
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