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「おら、頑張れー。」
「師匠も手伝ってください!」
「応援はしてやる。」
「酷い!!」
手伝う気は無いらしい。師からの助力を諦めたケイトは顔を真っ赤にし、荷車を引く。荷車を必死で引くケイトに対し、カグルの荷物は折れた包丁と鉄の代金を入れていた鞄、キセルだけだ。
「お。」
ガタンという音と共に動きだす荷車。今まで動かなかったのは車輪の前に石があったのが原因のようだ。
「では、二日後を楽しみにしています。」
「ああ。」
荷車に腰掛けるカグルが孤児院の院長の声に答える。ケイトは顔を真っ赤にしていて、返事をする余裕が無いらしい。
数十分後、漸くこの町の正門に辿り着く。
「ほら、ここからが辛いんだぞ。」
「どういうことですか?」
一度勢いが付いてしまえば後は楽だったのか、ケロッとした顔で尋ねるケイト。
「来る時のこと忘れたのか?帰りは上り坂だ。」
カグルの言葉に一瞬で顔が絶望に染まる。
「…師匠。」
「流石に手伝ってやるよ。でないと今日中に帰れそうにないからな。」
「ありがとうございます。」
面倒くさそうなカグルに礼を言うケイト。
「俺は後ろから押すからな。」
「はい。では、行きます。」
そう言って荷車を動かす二人。
数十分後
「…ゼェ…ハァ…。師匠…押してます…?」
「…ハァ…う、るせぇ…。老骨に…ゼェ…響くんだよ…。」
「…ハァ…ハァ。煙草の…吸いすぎ、です。」
二人は町と町の中間付近にいた。汗だくで。
「…禁煙…すっかな。」
「…ゼェ…今さら、です。」
「…ハァ…違ぇねぇ。畜生…牛でも…フゥ…借りときゃ…よかった。」
「…それも…今さら…です。」
二人は数十分後に漸く帰宅する。
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