プロローグ

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経一と英理は二人で当てもなく歩く。ただの住宅街を歩く。 なかなか身長差があり、二つの頭が仲良く揺れる。英理のアホ毛も揺れる。 だが勘違いをしてはいけない。 アホ毛が揺れているのは背の高い方の人間だ。そして英理が特出して背が高いわけではない。経一が小さいのだ。 経一が外出したくなかった理由はこれだ。 経一は英理が嫌いなわけではない。自分の身長を気にしているのだ。だが、今は英理との散歩を楽しむと決めたようだ。 歩いている途中、思い出したように 「やっぱり伯父さんが反対しなかったら鍛冶職人になりたかった?」 と英理が経一の顔を覗き込むように問う。 「そうだね。鍬とか鎌とか人の役に立つ物作れるし。」 ちくしょー、と付け加える。 「でも、お姉ちゃんはケイちゃんが鍛冶屋さんなら人のために色々したと思うよ。」 そう言われ、きょとんとした表情で経一は英理を見つめる。 「だって、ケイちゃんは人のためなら頑張れる子だもの。」 「う、うるさいよ!」 経一は顔を背けて言う。顔が赤いようだ。顔の赤い経一を連れ、英理は歩く。 「あれ?」 英理が声を上げる。視線の先には建築現場。 「そっかぁ、この空き地無くなっちゃうんだね。」 「へぇ~、知らなかった。小さな頃みんなで遊んだのにな。」 現在新居が建とうとしている土地は経一や英理が友人たちと遊んだことのある土地のようだ。 「やっちゃんとかユージとかと遊んだな~。」 経一の思い出。 「舞ちゃんとかとも遊んだよね。あの時のケイちゃん可愛かったな~。」 英理の思い出。
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