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「あら、お気遣いまでして下さったのですね。ありがとうございます。」
「い、いやそんな…。頭を上げて下さい!僕が勝手にやっただけですから!」
頭を下げる院長に慌てるケイト。院長はケイトの些細な気遣いが嬉しくて頭を下げた。ケイト自身は大層な事をしたと思っていないので感謝されて恥ずかしいのだ。頭を上げるように言われた院長は顔を上げ、子供たちは急に声を大きくしたケイトを凝視する。するとケイトは顔を赤くして俯いてしまった。
「ほら、早く食べないと冷めてしまいますよ。」
そう言われて食事を進めるケイト。漸く上げた顔は未だにほんのりと赤い。
「この度は修行に付き合っていただき、ありがとうございました。」
「いえいえ、私の方こそありがとうございました。」
食事を終えたケイトが院長に頭を下げる。対する院長はゆっくりと顔を左右に振り、彼女も感謝の言葉を告げる。
「では、僕はそろそろお暇させていただこうと思います。」
このケイトの発言に子供たちは騒ぎ始める。もっと遊びたいのだ。
「随分と好かれましたね。」
「え、ええ。少し遊んだだけなのですが…。」
服を引っ張り引きとめようとする子供たちを見ながら苦笑いをする二人。すでに手に遊具を持っている子供もいる。
「コラ、お兄さんが困っているでしょ。」
院長に言われ、渋々といった様子で離れる子供たち。
「近くに来るような事があったら寄るからね。」
近くの子供の頭を撫で、声を掛ける。子供に絶対寄るよう約束させられてケイトは孤児院を出た。
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