修行

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ケイトは更に自分の腕を上げるために師の最高の仕事を見届けようとする。すべてを師の動きのすべてを見ようとしても不可能だ。指先を観察し、手首を観察し、腕を観察するというように観察する部位を動かしていく。 今日、彼はすべての仕事が終わった後で反復練習を行うのだろう。夜遅く、音で近所に迷惑を掛けないように研摩の修業をするはずだ。さすがに鍛冶の反復練習はしない。隣の八百屋に怒られてしまう。事実ケイトは七歳の時、夜に修業をしようとしてカグルに怒られているのだ。その時は鉄を打つ前に止められた。 叱られた後、玄関前に立たされたのだが、しばらくして玄関前で爆睡しているのが発見された。カグルとアンは怒りを通り越して呆れて小さかったケイトを担いで家に入った。もちろんケイトは明朝怒られることとなったのは言うまでもない。 そんなことを思い出しながらアンの業を見ているケイト。自分と比較し、どこを修正すべきかを見る。現在の彼の集中力はアンのそれを大きく上回っている。 「これがアタシの限界かね。」 しばらく研がれた宝剣の刃を見るアン。窓から覗く夕日が刃に反射し、部屋に赤い筋を作る。素直に美しいと言える左右対称の宝剣。鍛えに鍛え、研ぎに研がれた宝剣。アンは宝剣を少し眺めた後、再び仕事を始める。宝剣の装飾だ。柄の先に宝石を付け、鍔に模様を刻む。 「うん…。いいかね。あとは頼んだよ、ケイト。しっかり磨いといてくれ。」 「はい。」 宝剣を渡され、刃に布を当てて拭き始めるケイト。遂に日は沈み、地平線が赤く光る。ケイトが丁寧に宝剣を磨く間にも空は徐々に暗くなる。
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