修行

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「ふぅ…。これでよしっ。」 ケイトの口から思わず溜め息が漏れる。すでに空はすっかり暗くなっているが、宝剣の刃は部屋の明かりに反射して明るく輝く。一つの曇りも無い刃は先程研ぎ終わった時よりもさらに輝いを増す。朝日に刃を照らせば今よりもずっと輝くだろう。宝剣を鞘に納め、そしていかにも高級そうな布に包む。 一仕事終えたケイトは、これから自分の時間。すでに二人の師は疲れて寝てしまっている。アンの業を見て感じたことを自分と比較しながら実際にやってみる。ケイトが今研いでいる刃物は数週間前に打った大振りのナイフだ。「違う…。」「こうか?」などと呟きながら手を動かす。刃を確認する以外で手を止めることは無い。 「んー、やっぱりなんか違うな…。」 頭を掻きながらナイフを片手で持ち、刃を眺めるケイト。納得のいく出来には中々ならないようだ。今日はもう遅いということでナイフや砥石など、道具をすべて片付け寝ることにしたようだ。 寝床に潜り込み、すぐに寝息を点て始めたケイト。数日間碌に眠っていなかった体は休憩を渇望しており、一気に疲労となってケイトに襲いかかった結果の爆睡だ。当分起きそうにないが、それはこの家の人間全員に共通する事だ。翌日、というよりも既に日を跨いでいるので今日なわけだが、日がかなり昇るまでこの家からは物音がしなかった。 この日、ケイトは最初に起きたカグルにまたしても叩き起こされる羽目になった。後に彼はこう語る。 「目覚ましドロップキックはやるほうにとってもやられるほうにとっても体に悪い。」 カグルは見事着地に失敗して腰を強打したという。
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