修行

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今回は結婚式に招待された客人であるということもあり、ケイトとアンの二人は馬車に揺られて街へと到着した。以前来た時とは様子が一変し、街中は結婚式を祝う民と警備兵、ゆったりと優雅に歩く貴族で溢れかえっている。式場にはさらに多くの貴族がごった返していた。 二人の服装は平民にとっての礼服。とてもシンプルな作りで、ケイトが燕尾服、アンはベージュのドレスだ。貴族たちの礼服は平民と異なり、嫌みたらしいほど豪華絢爛で、指輪やネックレスなどの装飾が輝いている。また色も華やかだ。いや、華やかな物が多すぎて寧ろ毒々しくなっている。ラフレシアの大群だ。 ラフレシア達とは違い、花嫁と花婿はシンプルで白く美しい服装をしている。それはまるで、毒々しい花々の並ぶ山道に突如現れた美しい白百合のよう。毒花たちに見守られながら式は進み、聖歌に包まれ式は終わった。 この国の結婚様式は地球とは異なる。そもそも神父がいない。花嫁と花婿は互いに愛を誓い合い、額を付けることで結婚が成立する。誓いのキスは無い。結婚が成立した後、神からの祝福と両人の幸福を願って聖歌を歌う。これで式は終了だ。 しかし、今回の結婚式は違う。そのために宝剣が打たれたのだ。花嫁と花婿が誓い合う際に、二人で宝剣を持ち、誓いと共に空を切る。王家と言うこともあり、怨まれると言うこともしばしばある。その邪念を斬ると言う意味で空を切る。 余談だが、アンは面倒くさがって聖歌を口パク、ケイトは鍛冶ばかりしていて歌詞を覚えていないために小声でワンテンポ遅くハミングをしていた。隣のおっさんに白い目で見られたことは言うまでも無い。
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