修行

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「え?えっと…あ、はい。来ましたね。住まいはここではないので、良く覚えています。」 ケイトの様子を見て、多少怪しい人物ではあるが敵意や悪意を感じなかったのか、普通に応対する少女。見た目で同年代だと判断できることも話す理由となっているのだろう。 「へぇ~、お住まいはどちらで?」 「はい、私は王都に住んでいます。立ったままでは辛くありませんか?お隣どうぞ。」 「あ、ありがとうございます。では、失礼します。」 同年代の相手とあまり話さないからだろう。ケイトの口が中々止まらない。しかし、対する彼女も止まらない。様子から察するに、彼女もまた、同年代の相手とあまり話す機会を持たないのだろう。 「あ、そうだ。私はミラ。今年で十一になりました。貴方のお名前はなんとおっしゃるんですか?」 「え?あ、ああ。そういえば言っておりませんでしたね。ケイトです。名字はありません。僕は十二ですね。よろしくお願いします、ミラさん。」 柔和な笑みでケイトの名を尋ねる少女。突然綺麗な笑顔を見せられたケイトは戸惑いながらも名乗る。 「あ、敬語は使わなくてもいいですよ。私が敬語なのは癖になってしまっているからです。」 「いえ、僕は平民なので。身分の上の方に敬語を使わないわけにはいきません。」 少し困ったような表情になりながら敬語を使い続けるケイト。しかし、ミラは頬を膨らませている。 「公の場ならまだしも、今はお父様も他の貴族の方もおりません。私は同年代の友人がいないものですから、気兼ねなく話せる相手が欲しかったのです。唐突ではありますが、私の友人になってくれませんか?」
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