修行

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本当にいきなり頼まれたケイト。驚いた表情を見せたが、すぐに笑顔になり、 「こんなに話しこんだのに、赤の他人という関係は寂しいよね。僕なんかでよければお友達になって下さい。」 彼女の目を見てこう言った。ウフフ、アハハとその後も楽しげに会話をしていた二人だったが、会話の終わりは突然やってきた。 「随分楽しそうじゃないの。おっさんたちも混ぜてくれないか?」 「「え…?」」 いつの間にか、背後に大振りの刃物を持った二人の男が立っていた。服装は闇に紛れるような黒。明らかに不審者だが、門番があれだったので簡単に侵入を許してしまったのだろう。 「こっちの女は金持ちの娘っぽいな。」 「ああ、男は仕草が俺たちと似ているから平民だろう。女を誘拐したらかなり儲かるんじゃねえか?」 「じゃ、さっさと始めるか。」 下卑た表情を隠そうともせず、ミラの品定めをする男たち。ミラは突然に驚き、固まってしまっている。ケイトはこの時考えていた。会場はかなり騒がしかった。ミラの高い音の悲鳴を聞けば人が来るかもしれないが、自分の声が届くとは思えない。ミラは様子からみて叫べるような状態にない。となれば、彼の頭に浮かぶ状況を打開する方法は一つしかない。 「ぅおらっ!」 「あぎっ!?」 不意打ちで近い方の男の顎を拳でかち上げる。丸腰の少年から攻撃されるとは思っていなかった男はまともに当たってしまう。鍛冶と家事、師による理不尽な荷物持ちなどで鍛えた体から放たれた拳だ。それが顎を的確に捉えた。一般的な同年代の子供たちよりも体の大きいケイトの一撃だ。大人だろうが顎にくらえばひとたまりも無い。
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