修行

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「あ…え…?血…?あ、ぁぁ…きゃぁぁああああああ!?」 声は徐々に大きくなり、邸宅中に響き渡るほど大きくなった。ケイトは自分に当たった刃物を拾い、再びミラを背に庇いながら男と交戦している。が、血が止まらず、片眼を開けていることが困難である。この状況で勝つことは不可能だ。彼の体に、少しずつ切り傷が増えていく。それでもケイトは退かない。彼の後ろには、たった一人の友達がいるから。 少し離れた場所からバタバタと足音が響いてくる。それも一つや二つではない。いたる所から足音が近づいてくる。男は足音を聴いて焦り始め、ケイトとミラを見るが、ケイトの目に闘志が籠っているのを見て、駆けだした。逃げるため、石造りの塀をよじ登っている。仲間の所へ行くのは諦めて逃げることに徹するようだ。 「大丈夫ですか!?」 一番速く悲鳴の許へ駆けつけたのは一人の女騎士だった。男は続けて到着した騎士たちに追いかけられている。捕まるのは時間の問題だろう。ケイトは男が塀に向かった時に刃物を落として片膝を着いた。ミラはケイトの様子を見て彼の傍にしゃがみこむ。女騎士はミラのそばに跪き、声を荒げる。 「私は大丈夫です!それより彼を!」 鬼気迫るといった様子で騎士に対し、大声を出すミラ。そんな彼女をケイトが右手で制する。 「大丈夫。血が足りなくてフラフラするだけだから。」 小さくてもはっきりとした声。その声を聴いてミラが落ち着き始める。数人の騎士に的確な指示を出し、ケイトが医務室へと運ばれた。本人は大丈夫だと言い張っていたが。
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