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十数分後のこと。医務室の扉の前で椅子に腰かけている男がいる。右目の上は包帯でグルグル巻きだ。彼の隣には痛そうに頭を押さえている老女。二人が誰であるかは言う必要も無い。
「ケイトさん、大丈夫ですか?」
心配そうにミラがケイトの顔を覗きこむ。今にも泣きだしてしまいそうだ。
「あはは、大丈夫大丈夫。お医者さんも、特に問題は無いって。」
笑いながらミラを安心させようとするケイト。彼の言葉に反応したのはミラではなく、二人の許へ駆けつけた騎士だった。
「貴様…!平民が姫様に向かってその口調はなんだ!」
憤慨する騎士。が、ケイトは彼女の様子よりも気になる単語を聴いた。
「…姫様?えっと…誰がですか?」
概ね予想は出来ているだろうが、一応確認のために控えめに質問をする。ミラは俯いている。
「姫様、まだ彼に仰っていなかったのですね?」
「…~♪~♪」
「口笛で誤魔化そうとしないでください!」
冷や汗を流しながら口笛を吹くミラ。騎士は顔を真っ赤にさせながら憤慨する。怒られて諦めたように口を開いた。
「私が王女であることを伏せていたのは事実です。しかし、敬語については私が彼頼んだこと。あなたにどうこう言われたくありません。」
ミラはそっぽを向いて口を尖らせている。騎士がさらに続けて咎めようと口を開いた瞬間、ケイトが柔和な笑みを浮かべながらミラに問うた。
「立場上、同年代の人達とも親や臣下たちとも社交辞令的な話しか出来ない。普通に気兼ねなく話せる相手が欲しかったじゃないの?」
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