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違う?と言葉を付けたし、ミラを見るケイト。彼女の目が徐々に輝いてくる。
「そう、それです!」
「イタッ!?チョッ、怪我!俺、怪我してるから!」
ケイトの手を取り、嬉しそうにブンブンと振るミラ。自分が思っていた事を理解してくれて喜んでいるようだが、体中に切り傷のあるケイトはたまったものではない。
「ミラァァアアア!!!!」
「どおぅ!?」
バンという大きい音と共に掛け込んできた成人男性。扉の前に居たケイトは吹き飛ばされて壁際でひっくり返っている。ミラは音と男性に驚いて飛び退いたため巻き込まれていない。医務室いた他の人間も同様だ。
「無事か、ミラ!?怪我は無いか!?」
ミラの肩を揺さぶり、怪我の有無を問いただそうとする男性。ミラはアウアウと声を上げながら為すがままとなっている。騎士は顎を落とし、アンはケイトを拾いに行った。ちなみに医務室に居るはずの医師は、勤務時間を終えているため、ケイトを治療した後帰宅している。妻と一人娘が待っているらしい。
「陛下!?なぜ医務室に!?」
そう、彼は国王。ミラは彼の十一番目の子であり、末っ子である。大臣たちが引くくらい溺愛されながら育てられたミラ。彼の正妻は、彼が若かりし頃責務から逃れて街を散策している時に偶然出会った呉服屋の娘だ。王の性格は適当なのだが、母が厳格であり、そのためミラは常に敬語と言う話し方になっている。礼儀作法を叩き込んだのも彼女だ。
「娘が襲われたと聞いて駆けつけぬ父があるか!」
「はわわ…。」
その肝心の娘は目を回している。
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