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「む?」
荒ぶる父の視界に入ったのは目が点になったまま、床でひっくり返っているケイト。騎士は突如動かなくなった王を見て冷や汗を流している。
「…貴様かぁぁああああ!!」
「違います、陛下!」
「ええい、放さぬか!私自らが鉄槌を下してやろう!」
騎士に羽交い締めにされながらも、鼻息を荒くし、ケイトに襲いかかろうとしている。ケイトとアンは落ち着くまで様子を見ている。話しかけて状況を悪化させることを避けるためだ。今の彼は人の話を聴いている余裕などないだろう。
「陛下!落ち着いてください!」
「ふはは!私は十分落ち着いている!さぁ、鉄槌を下してやろう!」
騎士を引き摺りながらケイトに近づいていく王。ケイトは面倒くさそうに顔を顰めている。もう一歩ケイトに近づこうとして、
「グブフ!?」
転んだ。理由は簡単。ミラが王の両足首を掴んでいるからである。そのまま騎士をどかして王にキャメルクラッチを極める。さすがに周囲の人間もこの行動は予想できなかったのか、唖然としたまま動かない。
この部屋には今、唖然としている三人と、話を聴きなさーい!と叫びながら一国の主にプロレス技を極める王女。そして技が完璧に極まっているため、悲鳴も上げられない国王がいるのみである。
「おら、止めてきな、ケイト。」
「ええ!?」
「鈍くさい子だね。早くお行きよ。」
アンに頭を叩かれながら命令されるケイト。まさか自分が、と思うのか、その顔は驚愕に染まるばかりである。騎士は床で止まったままなので、結局ケイトが止めることに。
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