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「はい。終わり終わり。」
ケイトに持ち上げられることによって、漸く王を解放するミラ。当人はむふー、と息を大きく吐き、不満そうである。王は四つん這いになりながら咽かえっている。
「お父様!この方は私を命がけで助けてくれた恩人です!」
その言葉、というよりも脅迫じみた怒声に無理やり動かされ、フラフラと立ち上がる王。
「本当にありがとう…。」
がっちりとケイトの両の手を握り締めて感謝の意を伝える。ミラを止めてくれてありがとう、本当に死ぬかと思った。とも告げる。
「ん?…おぉ!宝剣を打ってくれた君だったか!」
ケイトが誰なのか漸く気付き、握っている手をさらに大きく振りながら大笑いする。無論、ケイトは振り回されている。
「よし、私の独断で褒美を出そう!何か欲しいものはあるかね?」
「いいえ、私は褒美が欲しくて助けたのではございません。初めてできた友人を自分の出来る範囲で守っただけでございます。」
笑いながらケイトに問うた王。しかしケイトは友を助けただけだと言い、褒美を欲しがろうとしない。何度か問答を繰り返すが、結局は王が折れてしまった。王はミラに、良い友達ができたな。と言い残してパーティー会場に戻って行った。
「馬鹿だね。あんたの名前を売る良い機会だったのに。」
アンはミラと騎士に聞こえないよう、小声でケイトに話しかける。ケイトは苦笑いをするばかりだ。
「ま、それがあんたのいいところなんだけれどね。」
そう言ってアンもパーティー会場へと戻った。
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