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「……。」
ケイトは自らの師を見下ろしている。
そう、布団を蹴りと飛ばし、酒瓶を抱えながら盛大な鼾を掻く師を。
「頭を叩いても起きないんだよ。なんとかしとくれ。」
現在進行形でカグルの膝を叩いているアン。彼女も呆れてしまっているが、カグルが起きる様子は無い。
「師匠、起きてください。とっくに朝になってますよ。」
酒瓶を引っ張るケイト。
「「……。」」
カグルが釣れた。
「…んぉ?何してんだ、お前ら?」
宙ぶらりんの状態でうっすらと目を開けるカグル。自身が酒瓶を抱えていることにさえ気付いていない様子。寝ぼけている彼を見下ろす二人。
「いえ、起きてこなかったので、起こしに来ただけです。それよりも師匠、そろそろ腕が辛いんで、酒瓶を放してもらっていいいですか?」
「あ?なんで酒瓶なんて抱えてんだ?」
本人も覚えていないようだが、ケイトとアンがいないのをいいことに晩酌でもしていたのだろう。その結果泥酔し、ケイトとアンが返ってくる前に寝て、二人が起きるよりも遅く起きたのだ。
「…その包帯は?」
「昨日怪我しました。刃物が鈍だったので助かりました。」
「ふ~ん。まぁ、大事ないならそれでいい。」
まだ寝ぼけているのか、カグルの口から出る言葉はまったく脈絡がない。そしてその後、遅めの朝食を摂った三人は、いつものように動き出す。いつもと違うことと言えば、ケイトの包帯を換えたり、二日酔いのカグルがあまり仕事をしないことである。
そして、この日から約一月後、ケイトの不安が現実のものとなった。
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