修行

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カグルが死んでから、ケイトは更にストイックに修業に励んだ。アンもケイトに応え、今まで以上に厳しく指導していった。気がついたことがあれば空かさず口を挟む。いつしかケイトの齢は十三になっていた。 「師匠、まだ調子は戻りませんか?」 「…ああ、まだだね。むしろ最悪だよ。」 寝込むアンに粥を持ってくるケイト。彼女が寝込んでいる理由は、最近この国で流行っている病だ。病と言っても風邪なのだが。体力のあまり多くない幼児や老人が罹る場合が多い。勿論アンも例外ではない。日に日に衰弱していくアンを見て、ケイトは焦っている。 「聴きな、ケイト。」 天井を眺めながら言葉を紡ぎ始めるアン。ケイトは何かを感じたのか、その言葉を遮ろうとはせず、姿勢を正す。 「あたしはこの風邪がどうなろうと、もう死ぬ。自分の事だからなんとなくわかるさ。だからね、言わなくちゃいけないことがあるんだよ。修業を始めた頃に比べて、お前はずいぶんと成長した。鍛冶師しても、研ぎ師としてもね。」 師から何か雰囲気的な物を感じ取ったのか、居住まいを正すケイト。 「鍛冶については爺さんの担当だったからあたしはよく知らないよ。でも、研ぎ師としての事なら言える。まだあたしを越えたとは言えないけど、だいぶ上達した。これなら一人でもやっていけるだろう。 田舎の方で鍛冶の仕事がしたいんだってね。爺さんから聞いたよ。あたしが死んだらこの家売りな。その金があれば田舎で土地を買うくらいならできるだろうさ。なんか決めた事とかはあるのかい?」 「まだ…です。」 自分の事を見ていてくれた師に感謝し、涙を溢さないように少し上を見ながら答えるケイト。
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