鍛冶師ケイト・マクスウェル

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「ん?荷物持ちか?」 「へへへぇ~。正解。」 そう言ってケイトに笑顔を向ける。苦笑するケイトは、抱き上げていた童を降ろし、背に張り付く子供も降ろしてから、中にたくさん野菜が詰められた籠を担ぐ。ぶつぶつと文句を言いながら歩き始めるケイト。子供が好きなケイトは、己よりも小さなこの者たちに弱いのだ。ぞろぞろと童達を引き連れ、一同は女子の家を目指す。ケイトの肩に乗る鍬は後一本だ。 「ふぅ~、疲れた~。」 「こら、荷物持ったのは俺だ。」 態とらしくのびをする女子。もちろんケイトからお叱りをもらうが、当人は聞こえていないのか、返事をしない。玄関から中に入ったのはケイトと女子の二人で、他の童達は家の外で二人を待ち構えている。用事が終わったらケイトを捕まえて遊ぶつもりだ。 この世界での家屋はヨーロッパ風の建築を思い浮かべてほしい。近代的な建築ではなく、伝統的な建築だ。室内を土足で移動するという点に置いても同様である。農村地帯の家屋も同様に、ヨーロッパの農家の様式に似ている。つまり、カグルの葬儀の際、ケイトがした正座という座り方は、まず間違いなく汚れる。それでもケイトは正座で頭を下げたのだ。 それはさて置いて、今は家の中に入った二人である。奥の部屋まで行くと、一人の翁が椅子に座っていた。二人に気付くと柔和な笑みを浮かべる。 「よう、じっちゃん。鍬直しといたぜ。」 最後の鍬はこの翁のものだ。翁はケイトから鍬を受け取ると、品定めでもするかのように、角度を変えて観察する。そして満足げな笑みを浮かべた。
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