鍛冶師ケイト・マクスウェル

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「あんがとよ、ケイちゃん。これで仕事に戻れる。」 「気にすんなって。俺も世話になってるんだから。あぁ、あとさ。」 そう言って翁に籠を見せるケイト。女子は小さく、あっと声を上げる。 「これ、どこ置いといたらいい?」 「…この子は、またケイちゃんに荷物運ばせたのかい。」 呆れる翁。女子は常習犯のようである。 「だから、気にすんなって。毎日カンカンうるさいだろ?その詫びみたいなもんだよ。」 「ガキどもには良い目覚ましなんだけどな。」 「もう、ケイちゃん!早く行くよ!」 「うわっ、おい、こら!」 会話に入れず膨れていた女子は、二人の会話をぶった切ってケイトを外へと引っ張りだす。引かれるケイトは為すがまま。困りながらも、じゃあなじっちゃんと片手を上げて挨拶をする。翁も苦笑いをしながら、また来なよ、とケイトに。 外で待つ童達は相当退屈していたようだ。口々に遅い遅いと文句を垂れる。文句を言われたケイトは、何故自分が責められているのかわからないようで、首を傾げている。一人の童が何して遊ぶと切り出すことで、漸く責められていた理由が解ったようだ。 「いやいや、俺はこれから修業再開するぞ。今日は碌に鍛冶も研摩もしてねえ。てなわけで、そんじゃな。」 軽い感じを醸し出しつつ、自宅へと帰ろうとするケイト。そんな彼を童達が許すはずもない。すぐに囲まれて引っ張られる。が、体の大きいケイトにとってはそれほど問題ではなく、童達を体にくっつけながら歩く。普通に歩くよりも疲れるだけで、危険な事はないため、童達が纏わりついた時にケイトはよくこのような行動に出る。
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