鍛冶師ケイト・マクスウェル

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「…見事。」 女性は剣の美しさに見とれている。剣は直剣。刃は乱れず、剣先まで一直線に光が反射している。修理される前までは刃毀れが酷く、これで本当に戦えるのかと疑問に思うほどの状態であった。 「満足いただけましたか?」 「ああ。また切れ味が悪くなったらこちらに伺わせてもらうよ。ギルドで噂になるだけの腕はあるね。」 「あ、噂になっているんですか。知りませんでした。まあ、それは置いておいて、刃毀れに関しては以前よりも気にせずに剣を振って大丈夫だと思いますよ。」 「ほう、それはなぜだ?」 自分のことにあまり興味が無いのか、すぐに剣について話そうとするケイト。女性はそれについて聴く体制に入る。 「こちらの剣はあまり上等なものではないようですね。おそらく型に鉄を流し込んだだけの剣だと思います。なので丈夫にするために、熱して打ち直しました。」 「…あの鍛冶屋、文句言ってやる!高い金払ったのに半端なものよこしたのか!」 女性は怒りを顕にし、顔を真っ赤にしている。結構高い金を要求されたようだ。 「まぁまぁ、その鍛冶屋にも生活があるのでしょう。一本一本造るよりも、大量に造ってしまったほうがたくさん売れて儲かるでしょうし、修理が増えればもっと収入も増えますしね。」 剣を鞘に納め、布に包んでから女性に渡しながらも口を動かすケイト。女性は鼻を鳴らしながら剣を受け取る。 「仕方ない。君に免じてあの鍛冶屋に文句を言いに行かないことにしよう。金輪際あの鍛冶屋に行くことも無いけどね。君の世話になろうか。」 「ええ、歓迎しますよ。」
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