鍛冶師ケイト・マクスウェル

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ケイトは午後のために物置から材料などを出している。童達は相変わらず自由だ。鍛冶場に材料を入れ終える時には童達は飽きていなくなり、日は頭の上まで昇っていた。 取り敢えず鍛冶場と物置に鍵を掛けて昼食の準備を始める。この国では小麦や大麦、芋類を主食としている。遠い水の豊かな国では粟や米も食べられているらしいが、この国や近隣諸国では育ちがよくないため作られていない。 ケイトの食事はうどんや芋が主だ。麺つゆはケイトが適当に作っている。王都に行けば醤油や味噌に似た発酵食品もあるためそれほど苦労はしていない。引っ越してきた当初は村人が珍しがってうどんを食べに来ていた。今はほとんど来ない。そもそも麺を食べる文化がないのだ。 今日はうどんの上に甘辛く煮込まれた肉が乗っている。ずるずると音を起ててケイトの口の中へと消えていく。その間にもどのような物を作るのか考え、頭を働かせ続ける。カツンという音が聞こえ器に目を落とすと、器に入っていたうどんも肉もすでに無くなっていた。 立ち上がり食器を片づける。水瓶から柄杓で水を一杯汲み、直接口に運ぼうとしてやめた。一度他の器に移してから飲む。水瓶の蓋を閉じ、その上に柄杓を置く。柄杓から水滴が落ち、ぽたりと水瓶を打った。 水瓶には思ったよりも水が入っていなかったため、一度外へ行き、村の井戸から水を汲んでくる。三分の二程鍛冶場に持ち込み、残りは砥石を水に浸けておくために使う。そしてケイトは鍛冶場に向かう。イメージは固まったらしい。 午後の修業の始まりだ。
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