鍛冶師ケイト・マクスウェル

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空が白んできた頃。 「ドゥフッ!?」 奇妙な声を上げてケイトは目を覚ました。頭はまだ醒めていないらしく、何が起きたのか理解していない。やたらと痛む体。近くに転がっている桶。そして地べたに張り付いている自分。不可思議な事が突然起こったわけではない。木から落ちたのだ。数分の間動かずに自分の状況を考えていたケイトだったが、漸く理解して痛む体を動かしながら息を吐く。 首を左右に捻った後で思い切り伸びをする。その次に肩を回すなどストレッチを行う。一連の動作中、ずっと体から悲鳴が聞こえ続けた。そしてケイトは自分が寝ていた枝を見て呟く。 「…体、いってぇ。あんな固い所で寝るもんじゃねえな。」 自分の肩を揉みながら、昨晩猪に襲われた沢まで歩く。冷え切った水を顔に浴びせ、気合いを入れる。ケイトはこれから帰り道を探さなくてはならないのだ。 結論から言えば、帰り道は思いのほか早く見つかった。昨晩自分が来た方向に向けてなんとなく歩くと、話声と足音が聞こえたのだ。そちらに向かって小走りすると王都への一本道に当たった。沢は村からあまり離れていなかったようで、この道の周囲の風景には見覚えがある。後は村の方向に進むだけだ。 そして現在。村に向かおうとしていたケイトは何故か二人の女性に剣を向けられている。もちろんケイトは驚くが、敵意なんて無いため両手を挙げる。そして剣を向ける二人の顔を見て訝しげな表情をするのだ。 「えっと、昨日はどうも。」 「なんだ、君か。驚いた。」
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