鍛冶師ケイト・マクスウェル

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話し込んでいるうちに、三人はケイトの家の前まで来ていた。リザイアはこの家を見て感嘆の声を漏らす。こんな形の家など見たことが無いためだ。ケイトと彼女の姉は何か感想を言うわけでもなく家へと入り、リザイアもその二人を慌てて追う。 「随分と朝早いですが、お二人はもう朝ごはん食べたんですか?」 カウンターを軽々と飛び越えたケイトが振り返りながら二人に問う。 「私は食べた。」 「姉さんは食べたかもしれないが、朝早くに叩き起こされた私は食べてないんだぞ。ここに来るのは日が昇ってからでも良かったじゃないか。」 「何を言うか。他の依頼が入る前に依頼しておけば、最優先で作ってもらえる。時間が過ぎればその分だけ…。」 口論に発展しつつある姉妹の言い合い。それを止めるはずのケイトの姿がここにはない。リザイアが朝食を摂っていないと言った時に、奥へと引っ込んでしまったからだ。姉妹はそれに気付いていないようで、ケイトの家のカウンター前で言い合う。ケイトが戻ってきたのは良い争いが始まって十分ほどが経った頃。 「朝ごはんはもう少し待ってくださ…い…。何をしているんですか?」 カウンター越しに、互いの頬を抓り合う姉妹。互いに目の端に涙を溜めている。そしてリザイアの腹が鳴った。三人の視線が空腹を訴える腹に向かう。リザイアは恥ずかしさのあまり顔を真っ赤に染めている。 「もうしばらく時間が掛かるので、奥の居間で待っていて下さい。」 奥に通された二人は椅子に腰かけた。ケイトは一足先に移動し、今は台所に立っている。トントンと包丁がまな板を叩く音が聞こえ、ケイトの女子力を伺わせる。
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