鍛冶師ケイト・マクスウェル

20/30

8733人が本棚に入れています
本棚に追加
/107ページ
さて、これは困ったとトマス姉妹。これから出ようとしていた戸口には童達が犇めき合っている。童達もまた困っている。普段は起きて修業を始めているケイトの家から金属のぶつかり合う音が聞こえないため、ケイトを叩き起こしに来れば、知らない女性二人が家の中にいたのだ。その時一人の童がリザイアの姉を指差し少し大きな声を出した。 「あ、昨日のおばちゃんだ!」 「おば!?」 これは堪ったものではない。彼女は二十代半ばだ。おばちゃん呼ばわりされる年齢ではない。リザイアは隣で吹き出しそうになっている。そんな妹の脇腹に一発手刀を叩きこんでから童達を見る。リザイアは絶賛悶絶中。 「わ、私はまだ二十代だからな。おばちゃんではないぞ。」 笑顔で童達に言い聞かせるが、その顔は引き攣っている。その後、童達におばさんとお姉さんの境界線について熱く語る。童達は全くと言っていいほど話を聞いていない。そんな時だった。 カァーン 金属と金属がぶつかり合う音。家のすぐ近くから聞こえる。この音が聞こえると、童達はケイトと一緒に遊べないことを悟って引き上げていく。いつの間にか復活していたリザイアと共に家の裏手に回ると、少し小さめの建物がある。音はそこから聞こえてくる。近づいて中を覗きこもうとする二人。 「ケイちゃん怒るよ?」 「「ほっ?!」」 いつの間にか二人の後ろに女子が立っている。背負った籠に農作物をたくさん詰め込んで、二人を純真無垢な瞳で見る。重そうなその籠を地面に下ろし、自身は大きく伸びをした。
/107ページ

最初のコメントを投稿しよう!

8733人が本棚に入れています
本棚に追加