鍛冶師ケイト・マクスウェル

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外に出たケイト。灼熱の空間に置かれていた体は風を冷たく感じ、大きく息を吸い込めば肺は押し広げられて体の中にも冷たい空気が入り込む。そんなケイトの右手には打ったばかりのレイピアが。童達を近づけないのはこのためだ。ケイトは鍛冶を終えると、打った武器を家の中に持って行き、その後で鞘や柄などを作る。たとえ布を巻いていたとしても危険が大きいため童達を近づけない。小さな童達が足下にいてもケイトは気付けないのだ。 とりあえず、疲れた体を少し休めるために家の中に入る。裏口から入れば、ケイトの部屋はすぐそこだ。しかし、自分の部屋には戻らず、居間へと歩くケイト。誰もいない居間に入り、湯を沸かしてから茶を啜る。啜りながらレイピアについて考える。あーでもない、こーでもないと色々考えるのだが、結局は研いで振ってみてから考えようと彼の中で考えがまとまった。 一服した彼は、次の行動に出る。次の工程である研摩だ。砥石の準備は出来ている。場所を作業場に移し、そこで仕事をする。砥石の上で刃を滑らせ、磨き上げる。あまり得意ではなかった研摩の作業も、随分と様になった。 いつしか日は沈み始め、空は少しずつ赤く染まっていく。その頃ケイトは研摩したレイピアの汚れを落としていた。もうすぐ空は暗くなる。作り慣れない武器で時間が取られてしまい、作業が思ったよりも進まなかった。柄や鞘、鍔を作るのは明日にしようと、レイピアに錆止めの油を塗って今日の作業は終わりを迎える。レイピアは厚手の布に包み、童達が触れないように物置へと入れて鍵を閉めた。
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