鍛冶師ケイト・マクスウェル

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翌朝。ケイトは朝飯を食らった後、レイピアの柄と鍔、それから鞘を拵えていた。鍔は鉄だが、他は木で出来ている。特筆すべきことも無く、一般的な作りと言える。昼前には一通り完成していた。 あまり機会の無かった細剣を作ったため試し切りをしようと思い立ち、少し太めの枝に藁を束ねて括りつけた。外にそれを立て、自らは剣を握る。試し切りとはいうものの、実際は藁の束を突くだけだ。ケイトはレイピアを胸の前に構えて踏み込むと同時に右手に持ったレイピアを突きだした。 刃が藁の束を貫くと同時にケイトの眉間に皺が寄った。刃渡りや刃の幅など、自分に合わせて打ったわけではないが、それでもケイトは違和感を覚えて刃を藁から引き抜き、眺める。 普段剣を持たぬ者や触れる機会の少ない者にはわからない感覚があるようで、毎日鉄に触れているケイトだからこそ気付いたことなのか、刃が僅かに曲がったのを感覚だけで見抜いた。これではダメだとすぐさま踵を返し、鍛冶の準備をして鍛冶場へと向かう。 何が悪かったのかを考え、反省し、修正を加えながら鉄を打つ。額から汗が吹き出し、鎚を振る腕には力が入る。打ち終わったのは夕暮れである。童達の気配もあったが、そんなものに気を配っていられるほどケイトに余裕は無かった。鍛冶屋の腕には、武器を使う人の命が掛かっているのである。 日が暮れてから、改めて二本の刃を見比べる。刃の厚さが悪いのか、幅が狭すぎたのか、はたまたケイトが力を入れ過ぎたのか。しかし、見て考えても正解は導き出せないと思い、ケイトは翌日の自分にすべてを放り投げて寝ることに決めた。
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